60歳以上、働きたいけど仕事がない
内閣府が、60歳以上の働いている高齢者に対して、何歳まで働きたいかを調べています。
内閣府 平成29年版高齢化白書より
65歳までは働きたい人 93.2%
70歳までは働きたい人 79.7%
75歳までは働きたい人 57.8%
80歳までは働きたい人 46.4%
いつまでも働きたい人 42.0%
いま60歳の日本人は、「あと10年、70歳までは働きたい人」が約8割。「あと20年、80歳までは働きたい人」が約5割という結果です。
その他に「働けるうちはいつまでも働きたい人」が約4割おられます。では、それに対して実際の就業率はどうか。
総務省統計局 高齢者就業率(2019)
年齢 | 男女計 | 男性 | 女性 |
60~64歳 | 70.3% | 82.3% | 58.6% |
65~69歳 | 48.4% | 58.9% | 38.6% |
70歳以上 | 24.9% | 34.1% | 17.8% |
年齢別 働きたい人と就業率の差異
対象年齢 | 男女計 差異 | 男性 差異 | 女性 差異 |
60~64歳の人 | △22.9% | △10.9% | △ 34.6% |
65~69歳の人 | △31.3% | △ 20.8% | △ 41.1% |
70~74歳の人 | △32.9% | △ 23.7% | △ 40.0% |
- 女性の差異が大きい。すべての年齢区分で3割から4割が、働きたくても働けない状況
- 男性は64歳までは、ほぼ希望どおり働けている
- 男性は65歳を超えると、定年後の再雇用(60~64歳)が終わった人が働かなくなるために、差異が広がる
定年後6割が再就職できない惨劇
人生100年時代といわれる昨今、定年退職後も働き続けたいをいう気運が高まっている。しかし、どれだけ優秀な人材だとしても年齢がネックになり、再就職が叶わないケースが6割近くあるという。一体どういうことなのだろうか。
「まず、優秀なスキルや経歴がある2割の人たちは、問題なく働き続けられます。また別の2割の人たちは『働けるなら』と、仕事内容や活かせるスキルに拘らず働き口を見つけます。問題は残りの6割の人たち。この層は大企業の看板に頼って仕事をしてきてスキルがなく、一方で仕事内容への拘りがあり、仕事を見つけづらい。しかもこれまでの経験が邪魔して変われない、これが多くのシニアがなかなか再就職できない問題の根源だと考えています」(中略)
「企業側は仮にフルタイムで働ける優秀な人だったとしても高齢の社員を入れたがらないんです。65歳まであと数年しかない人材を積極的に採ろうとは思わない。逆に、大企業で勤めたシニアの人材だった場合、中小企業での仕事のスケールが小さいことにモチベーションが上がらないこともある。お互いの考えがミスマッチを起こしており、高齢者はなかなかフルタイムでの再就職に結びつかないということがわかりました」
松嶋三郎『コロナより怖い”老後大格差地獄”が襲来…定年後6割が再就職できない惨劇』
https://president.jp/articles/-/39795?page=1
実にもったいないことです。この人たちは、現役時代に厖大な時間をかけて蓄積した「経験・スキル・ノウハウ」を持っているはず。それを死滅させることは本当にもったいない。日本の社会にとって大損失だ。
そないに優秀な男はんたちなら、新選組に入って、きばってくれたら良ろしおすのになぁ。
この6割の人々は、日本の勤労者の中で能力的に最上位にいます。もっとも優秀な人たちです。
この人達の5%、いや1%でもいいから独立・起業して、スモールビジネスを始めてくれたら……。地域社会にとっても、日本の未来にとっても、こんなに良いことはないのに……。
50代60代は正社員の求人が少ない
シニアの求人情報を見ていて感じるのは“正社員および社員待遇“の仕事が少ないことです。
スペシャリスト(専門職)ならともかく、ゼネラリスト(専門職以外)のシニアに対する求人は「非正規雇用の派遣とパート・アルバイト募集」ばかりです。
調査1 ハローワークの正社員求人
調査内容
●ハローワークにある「正社員の求人数」を調査しました。
調査日 2022/6/1
求人区分 一般求人「フルタイム」
年齢 60歳
就業場所 各都道府県の県庁所在地
希望する職種 指定しない
雇用形態 正社員
賃金 指定しない
●調査結果1
人口 順位 | 都道 府県名 | 年齢 不問の 求人数 | 年齢制限 ありの 求人数 (18~64) | 合計 |
2位 | 神奈川県 横浜市 | 746 | 2,445 | 3,191 |
10位 | 静岡県 静岡市 | 234 | 659 | 893 |
20位 | 岡山県 岡山市 | 396 | 934 | 1,330 |
30位 | 長崎県 長崎市 | 146 | 424 | 570 |
40位 | 和歌山県 和歌山市 | 121 | 375 | 496 |
これがハローワークにある「正社員求人数」(賃金を指定しない)です。
つぎに「フリーワード検索」を使って「シニア向けの求人」だけを抜き出してみました。
検索キーワード 「シニア」または「高齢者」
人口 順位 | 都道 府県名 | FREE WORD “シニア“ | FREE WORD “高齢者“ | 合計 |
2位 | 神奈川県 横浜市 | 17 | 297 | 314 |
10位 | 静岡県 静岡市 | 8 | 78 | 86 |
20位 | 岡山県 岡山市 | 9 | 93 | 102 |
30位 | 長崎県 長崎市 | 1 | 49 | 50 |
40位 | 和歌山県 和歌山市 | 0 | 42 | 42 |
●「全年齢に対する求人数」における「シニア向け求人数」の比率
人口 順位 | 都道 府県名 | すべての 年齢層 | シニア 向け | 比率 |
2位 | 神奈川県 横浜市 | 3,191 | 314 | 9.8% |
10位 | 静岡県 静岡市 | 893 | 86 | 9.6% |
20位 | 岡山県 岡山市 | 1,330 | 102 | 7.7% |
30位 | 長崎県 長崎市 | 570 | 50 | 8.8% |
40位 | 和歌山県 和歌山市 | 496 | 42 | 8.5% |
合計 | 6,480 | 594 | 9.2% |
ハローワークの全正社員求人の中で
シニア向け求人は平均9.2%しかない!
調査2 タウンワークの正社員求人
数多くの求人を持っているサイト『タウンワーク』を使って、雇用形態別の求人数を調べてみました。
調査内容
●タウンワークの雇用形態別の求人数
●調査都道府県 人口順位02位 神奈川県
人口順位10位 静岡県
人口順位20位 岡山県
人口順位30位 長崎県
人口順位40位 和歌山県
●調査した雇用形態
・正社員
・パート・アルバイト
・派遣
●調査日 2022/5/30
●職種 指定しない
●給与・時給 指定しない
●検索条件 「シニア応援」
(シニア向けの求人のみ)
タウンワーク | 正社員 | パート・ アルバイト | 派遣 |
神奈川県 | 701 | 8,867 | 2,517 |
静岡県 | 246 | 2,530 | 841 |
岡山県 | 70 | 907 | 314 |
長崎県 | 16 | 417 | 91 |
和歌山県 | 26 | 267 | 82 |
合計 | 1,059 5.9% | 12,988 72.6% | 3,845 21.5% |
タウンワークにある全ての
シニア向け求人数 17,892件
正社員 1,059件 5.9%
パート・バイト 12,988件 72.6%
派遣社員 3,845件 21.5%
50歳以上、非正規雇用で年収200万円を覚悟せよ
一般的に転職や再就職の際に最も頼りたいものといったら「転職サイトと転職エージェント」でしょう。現在では「転職・再就職の両輪」です。
では、転職サイトや転職エージェントにシニアの案件はどれくらいあるのか?
残念ながら「50代以降に対する※正社員案件」はほとんどありません。
※正確にいうと、年収500万円以上のような「待遇のいい正社員求人」がないのです。年収300万円くらいの求人で良ければ、ハローワークにたくさんあります。
これには理由があります。企業から転職サイトや転職エージェントに来る求人案件には、必ず年齢が設定されているからです。
正直、難関大学卒で日系大企業から外資系企業を渡り歩いた「ピカピカの経歴」を持っていたとしてもダメです。
なぜなら「シニアの釣り場には魚がいない」からです。どんなに釣り名人でも、魚がいなければ釣ることはできません。それと同じです。
それでも、あなたがスペシャリスト(専門職)なら、職種特化型の転職サイトや転職エージェントを使えば求人があると思います。
たとえば看護師さんなら「看護師専門の転職サイトや転職エージェント」を使うのです。おそらく「まずまずの正社員求人」があると思います。
しかし「ゼネラリスト(専門職以外)の場合はかなり厳しい」と言わざるを得ません。
厚生労働省の調査(平成29年勤労条件総合調査)によると、約8割の会社が60歳で定年です。
自社の社員でさえ60歳で定年退職させています。50歳以降であれば、定年まで最大でも10年弱しか働けません。かつ最も高賃金(高コスト)です。これでは60歳前後の人間を、わざわざ外部から採用するわけがありません。
そう考えれば、企業がシニアを正社員で採用しないのは、仕方のないことです。
50歳以上の転職・再就職は年収が大幅にダウン
50代のサラリーマンが高収入だった理由は、仕事の能力が高いからではありません。日本の企業が年功序列賃金が採用していたからです。
年功序列賃金は生涯収入の”長期後取り制度”です。ヤングは能力より安く、ミドルはトントン、シニアになると能力よりも高い給与をもらえます。50代が高収入の理由は”仕事の能力”ではなく”在籍年数の長さ”なのです。
つまり、シニアが転職・再就職をするということは、何らかの理由(倒産、リストラ、早期退職etc.)により、こうした”年功序列賃金の組織から離れる”ことなのです。
ゆえに、50歳以降の転職はよほどの専門的なスキルがない限り、収入の現状維持は困難です。特に大企業に勤める人は大幅な給与ダウン必至。たとえ運よく転職できたとしても、年収が半分以下になる可能性が高いということです。
また、離職後1年以内に次の仕事が決まる割合も55歳以上は4割しかありません。下手をすると1年以上無職になる可能性だってあります。
年収200万円くらいの派遣やパートでよければ、簡単に見つかりますけどね……。
- ゼネラリストで
正社員を希望する場合- 正社員の求人はほとんどない
- 転職サイトや転職エージェントは役に立たない
- ハローワークを中心とした公共職業紹介サービスがメイン
- ゼネラリストで
パート・バイトや派遣を希望する場合- シニア向けの求人がたくさんある
- 転職(求人)サイトと公共職業紹介サービスを併用して利用できる
- 転職(求人)サイトがメイン
- 非正規雇用のパートや派遣では年収200万円が限界